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「香坂さん温かい紅茶を入れたのでどうぞ」
木製のトレーを手にダイニングテーブルへと
向かう。
今日は、手土産としてフルーツタルトをいた
だいた。
マグカップと丸いお皿を２つずつ置いたら、
悠生を、私の隣のキッズチェアに座らせて、
一緒におやつタイムだ。
「これなら悠生くんも一緒に食べられるかと
思って。
どう？お口に合うかな」
テーブルを挟んで座る香坂さんがにこやかに
尋ねる。
「美味しいみたいです。
フルーツが大好きなので喜んで食べてます」
２歳になっていろいろ食べられるようになっ
てきた。
小さく切ったタルトとフルーツをそっと口に
運ぶと、美味しそうに噛んで味わっていて。
最近は同じ物を食べる喜びを実感している。
「あっ、そういえば昨日歯みがき粉のＣＭで
旦那さんを見かけたわ。
さすが、ＣＭ契約数トップの人気モデルね」
ふいに、思い出したように振られた話題に、
私は「変わらずお仕事をいただけてありがた
いです」と素直に感謝の気持ちを口にする。
二人の会話に夫の直生の話題が挙がるのも、
すっかり習慣となった。
あれは、結婚式の招待状が出来上がった頃。
それまでずっと秘密にしていた結婚相手を、
香坂さんを始め職場の方々に初めて打ち明け
たのだ。
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