Happy ever after

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正直な、胸の内だった。 職場の皆さんから復帰を歓迎してもらって、 家族からも後押ししてもらって幸せな反面、 復帰すればこれまで通りにはいかなくなる。 慣れるまで毎日いっぱいいっぱいだろうし、 きっと、いろいろな面で行き届かなくなって しまう。 そんな思いが次から次へと押し寄せてきて。 一歩を、踏み出せない。 「愛也」 その時、大きな手のひらが頭上へと置かれ、 ポンポンと触れられる。 まるで、宥めるような励ますような仕草に、 ぐっと込み上げていると肩を引き寄せられ、 直生の肩にコテンと頭を載せる形になった。 「全部抱え込まないで。 夫婦なんだから協力しあってやっていこう」 左手が、ゆっくりとした動作で頭を撫でる。 口調も行動も包まれるように温かく優しく。 全てで不安を取り除こうとしてくれていると 気づき、私はしみじみしながら耳を傾けた。 「仕事をもっていればお互いさまなんだし。 それに、間違っても迷惑だとか不自由だとか なんてことはないから。 大丈夫、愛也がどれだけ家族を大事にしてく れてるかは俺と悠生が一番よく分かってる」 だから、心配しないでと言っているようで。 「……ありがとう直生」 頷くと、おでこにやんわりと唇が置かれる。 訪れた甘い気配に反応して視線を上げようと すると、それよりも早く顔を覗き込まれた。
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