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風邪の症状が出たのは結婚式の翌日だった。
準備で張り詰めていた気が解放されたこと、
当日のハードなスケジュールも合わさって、
どうやら一気に疲れが出てしまったようだ。
それで、やはり無理をさせたのだと痛感し、
本当に、申し訳なくて。
負担をかけないように家事ももっとやろう、
そう思っていたのだが。
「すぐ、出来ますから。
着替えてきてください」
キッチンからだんだんいい匂いがしてくる。
今夜は、好物でもあるカレーライスらしい。
「ああ」
にっこりと笑いかける愛也に笑みを返すと、
キッチンへ行って「ありがとう」と言って、
こめかみに唇を当てる。
……欲求不満だろうか。
結婚式の翌日にやり直すつもりだった初夜が
流れて、そんなこんなで触れ合えていない。
早く抱きたいがこればかりはしょうがない。
風邪が治るまではスキンシップもお預けだ。
「じゃあ着替えてくる」
「はい」と頷いた妻を愛おしく思いながら。
俺は着替えの為にクローゼットへ向かった。
23時。
カチャ。
シャワーを浴びてから静かに寝室に入ると、
愛也は、ベッドの上で丸まって眠っていた。
これが、また可愛くて。
起こさないよう布団を掛けつつ横になると、
向こうを向いた寝姿を背後からそっと抱く。
暖かい。
安心感しかない体温に身も心も癒される中、
微睡む。
一緒に暮らし始めて半年以上になるけれど、
帰ると、バランスを考えた晩ご飯が毎日ある
生活というのは幸せで。
自分はこんなにも家庭を求めていたんだな、
と実感している日々だ。
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