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「愛也、……おやすみ」
低く呟いて目を閉じる。
その内、処方せんが効いてすやすやと寝息を
立てる愛也に誘われるように落ちていって。
翌朝アラームが鳴るまでぐっすりと眠った。
5日後。
19時。
帰宅し、玄関でスニーカーを脱いでいると、
リビングから出てきた愛也が「おかえりなさ
い」と出迎えてくれる。
この笑顔でどんな疲れも吹き飛んでしまう。
廊下に上がってから「ただいま」と言うと、
俺はその肩を右手で緩く抱き頬に口づけた。
本人の風邪が治るまではこの習慣も控えてい
たから、1週間ぶりだ。
「やっと一段落ですね」
「うん。
これでしばらくは朝はゆっくり寝れるかな」
思わず、苦笑が漏れる。
5日間、ファッション誌やら媒体の撮影で、
早朝スタートして夜は9時までとかざらで、
めちゃくちゃハードなスケジュールだった。
慣れているとはいえ体力的にキツかったのは
本音だ。
「そう思ってシーツと枕カバー変えました。
お風呂も沸いてるから。
今日はシャワーじゃなくてお湯に浸かって、
疲れをとってください」
「ああ。
いろいろとありがとう」
自分もフルタイムで働いているというのに、
いつも、妻として夫の環境を整えてくれる。
それが、いかに体調やコンディションに好影
響をもたらしているか。
感謝してもしきれない。
「これ、愛也にお土産」
左手に持っていたブルーの紙袋を差し出す。
「あっ、プリンですか?
嬉しい」
それは、愛也の好物のチョコレートプリン。
車で送り届けてもらう途中で見かけたので、
大嶋さんに代わりに購入してもらったのだ。
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