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「あと少しで、みんなこの家から出て行っちゃうのね。寂しくなるな」
「そうですね……、あ」
そうだ。ずっと、何か大事なことを忘れているような気がしてたんだけど、思い出した。
春との交際をおじさんに認めてもらうことに必死で、もうひとつ、大事な話をしていなかった。
というか多分、春も忘れてるっぽい。
「あの、おばさん」
「なあに?」
「えっと、すっかり言い忘れてたんですけど」
大事な事だから、私から話しておかなきゃ。
そう思って口を開いた私が声を発するのと、キッチンにおじさんが入ってくるのは、ほぼ同時だった。
「うぅ……母さん胃薬をくれ……もうだめだ精神的ダメージが……あああ俺のもかちゃんが……」
「4月から春と同棲しようと思ってるんですけど」
「……………………。」
直後、背後でガタッと音がした。
私とおばさんが入口を振り返る。
視線の先に、白目をむいて後ろにぶっ倒れていくおじさんの姿があった。
「あらあら」
「………」
………タイミング悪いです。
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