後日談 第5話

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◇ ◇ ◇ ここは、とある悪魔が住まう館の前。 嘘です。郁兄の部屋の前。 「こんこん」 「口で言ったらノックじゃないだろ」 「はいりまーす」 その突っ込みに触れることなくドアを開く。 ベッドを背もたれにしながら、郁兄はスマホをいじっていた。 その隣に近づいて座る。 「チョコいる?」 「いる」 「彼女さんから貰ったなら私の要らないのでは」 「いるっての」 ん、と手の平を向けられて催促される。 その上に、本日の主役をポン、と置いた。 愛らしいラッピングに包まれた中身は、なんと私のお手製もの。友達から「手作りチョコを作りたいからやり方教えて」とせがまれて、一緒に作ったガトーショコラだ。 どうせだったら気合の入ったもの作ろう、なんてノリで作ったチョコスイートの定番もの。しっとり濃厚で、でも重過ぎない最高の出来上がり。誰かにあげるのがもったいないくらい。 可愛くラッピングをして、バレンタイン用のシールも貼った。スーパーで売っているものよりも、遥かに手が込んだ仕上がりに見える。 「義理ですよ」 「わかってるし」 どーも、と素っ気無い返事が返ってくる。 せっかく丹精込めて作ったのに、もうちょっと嬉しそうな顔してもいいんじゃないですかね! とはいえ、これが郁兄のスタンスなので何も言わないでおく。
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