後日談 第5話

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毎年この時期になると、私は多忙の身を極める。料理もお菓子作りもプロ級の腕前は、クラス中の女子からも絶賛の嵐なんだから。手作りチョコも、ケーキだって、私の手に掛かれば余裕です。 かくいう私も例外ではなく、毎年この日には、春と郁兄とおじさんにチョコをあげている。ついでにおばさんと友達にも。 バレンタインデーは好きな人にチョコをあげる、そんな形式はもう古い。あげたい人にチョコをあげるのが今風で、身構えるほど重い行事でもなくなった。 それでも私は、クラスの男子にバレンタインチョコをあげたことはないけれど。 「ホワイトデー、期待してまーす」 「はいはい」 1ヵ月後のお返しを催促して腰を上げた時。 「お前、結構言うな」 「え?」 「親父との事」 はたり、と瞬きを落とす。 何のことだろうと一瞬考えて、春と交際したい旨を告げた時のことかな、と思い至る。 好きな人に、好きって伝えられる事。些細なことだけど、それだけで幸せなことなんだと私は思う。明日にはもしかしたら、伝えられなくなるかもしれないから。そんな未来は考えたくないけれど。 好きって伝えたい時に、伝えられる相手が側にいない辛さは、誰よりも知ってるつもりだ。 「ちょっと感動した」 「本当ですか」 「おう」 「ありがとうございます。感動しながら人のプリン食べやがったんですねこのやろう」 「焼きプリン買っておいたから」 「焼いたのはやなの! 生がいいの!」 「はいはい」 さっさと春樹んとこ行け、と追い払われる。 むっとしながら立ち去ろうとした時、あ、と郁兄に引き止められた。
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