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やっぱり、同棲はまだ早いよね。
だって私達、まだ交際すら始まっていない上に未成年だもん。親に反対されるのは当然かもしれない。
だけど今は、交際を認めてくれただけでも良かったって思わなきゃ。
そう前向きに捉えて顔を上げる。
と、郁兄は何やら考え込んでいる様子だった。
「どしたの」
「いや、なんでもない」
「?」
「それよりいいのか、春樹んとこ行かなくて」
はぐらかされて、またもや追い出される。
妙な合間が気になったけれど、問い質したどころで郁兄は口を開かないだろう。だから気にしないでおく。
もうひとつのチョコを片手に、2つ隣の部屋の前に立つ。
「こんこん」
「……何それ? キツネの真似?」
中から椅子の軋む音と、微かな笑い声が聞こえてきた。
「ノックの音です」
「ああ、なるほど」
「入ってもいい?」
「いいよ」
承諾を得て中に入る。春の机の上には受験対策用のプリントや参考書がたくさん積まれていた。
ずっと机に向きっぱなしだったのだろう、私が来たことで一旦集中力が切れた春は、椅子に座ったまま腕を伸ばして、一気に脱力していた。
「……疲れた」
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