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わたし───
最上もかと、いとこの彼は、誰にも言えない秘密を共有している。
「───もか」
放課後。
窓から夕日が差し込む廊下の端。
背後から私を呼び止めたその声は、既に聞き慣れてしまったもの。
透き通った綺麗な低音は、家で聞くそれと学校で聞くのとでは、微妙に温度が違う気がする。気がするだけ、かもしれないけれど。
足を止めて後ろを振り向く。
その先にいたのは、予想通りの彼の姿。
両隣にいた友人2人が、その途端、黄色い声を上げた。ミーハー共め。
「もか、今帰り?」
「うん、そうだよ。春も?」
息を切らしながら駆け寄ってきた男の子。私の目の前まで辿り着き、友人達にも軽く会釈をした。
頬を赤く染めた2人が、やや長身の彼をキラキラした眼差しで見上げている。
……ミーハー"友"め。
「この時間に春と会うの、珍しいね」
会話を交わしつつ、隣同士に並ぶ。
夕闇に染まる廊下に伸びていく4つの影。
彼と帰りを共にするのは、かなり久しぶりかもしれない。
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