第1話

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わたし─── 最上もかと、いとこの彼は、誰にも言えない秘密を共有している。 「───もか」 放課後。 窓から夕日が差し込む廊下の端。 背後から私を呼び止めたその声は、既に聞き慣れてしまったもの。 透き通った綺麗な低音は、家で聞くそれと学校で聞くのとでは、微妙に温度が違う気がする。気がするだけ、かもしれないけれど。 足を止めて後ろを振り向く。 その先にいたのは、予想通りの彼の姿。 両隣にいた友人2人が、その途端、黄色い声を上げた。ミーハー共め。 「もか、今帰り?」 「うん、そうだよ。春も?」 息を切らしながら駆け寄ってきた男の子。私の目の前まで辿り着き、友人達にも軽く会釈をした。 頬を赤く染めた2人が、やや長身の彼をキラキラした眼差しで見上げている。 ……ミーハー"友"め。 「この時間に春と会うの、珍しいね」 会話を交わしつつ、隣同士に並ぶ。 夕闇に染まる廊下に伸びていく4つの影。 彼と帰りを共にするのは、かなり久しぶりかもしれない。
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