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夕日に照らされた彼の髪に、紅の影が落ちる。端正な顔立ちと爽やかなルックス、そして穏やかな人柄でみんなに好かれている彼は、私のいとこにあたる桐谷春樹。同じ高校に通う、同い年の男の子。
「今までは、もかの帰りが遅かったからね」
「うん。部活も引退しちゃったし、こんなに早く帰れるの、変な感じ」
「今帰りなら、俺も一緒にいいかな」
「も、「もちろん大丈夫です! さあ今すぐ行きましょう何処までも!!」
恍惚とした法悦の輝きを満面に浮かべ、私を押しのけて友人達が会話に入ってくる。ガッツキ具合が半端ない。
白けた視線を送る私とは対照的に、春はそれすらも優しい笑顔で受け止めている。
「あ、ごめんね。一緒に居られるの、校門前までなんだ」
春がそう告げれば、小さな悲鳴が上がった。
「なんで? 春、どっか行くの?」
「行かないけど───郁也が、車で迎えに来てくれるみたいだから」
その一言に、私は目を瞬かせた。
「……え? ええっ? 郁兄が?」
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