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「悪、魔?」
2人の友人は不安そうな顔つきで、私と春を交互に見やる。春も異論は無いと言うように、控えめに頷いていた。
普段から、あの悪魔による暴挙の被害を被っている私と春は、共に同じ苦労を分かち合う同志なのだ。運命共同体なのだ。
「……そんなにすごいお兄サンなの?」
友人達の問い掛けに、春は微妙な表情を浮かべながら「ちょっと、ね」と曖昧に言葉を濁した。
私と春は小学校から高校まで、地元の同じ学校に通っている。
けど郁兄は違う。
自身がモテる事を十分理解しているあの男は、「女に引っ掻き回されるのはウザい」と男子校に通っていた。
つまり友人達を含め、この学校の人達は郁兄の事をほぼ知らない。春に兄がいるって事自体、知らない人が多そうだ。
これは、考えようによっては都合がいい。
普段の鬱憤を晴らす、いい機会じゃないか。
というわけで、私は声を張り上げた。
「そりゃあね! イケメンだか何だか知らんけど、ちょーっとだけ顔がいいだけで実態は極悪非道の限りを尽くす、最低最悪の大魔神だよ! 口は悪いし暴力振るうし、面倒くさがりで人に厄介事全部押し付けるし! 挙げ句の果てに、人が買ってきた高級プリン全部食べやがった! 昨日!!!」
私のプリンだったのに。1個148円。
絶対許さん。
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