朝焼けBAD DAY

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朝焼けBAD DAY

 頭が、痛い。  真っ暗な視界がチカチカ明滅する。  うう、痛い、痛いぞ……。  明滅の間隔が短くなって、 「っ!!」 瞼を開けると眩い光が目を刺してきた。  ――朝。  一瞬夢かと思ったが、いやこれは現実っぽいと思い直す。  いやに手触りのツルツルした布を全身で感じて、いつもと違う寝起きの感触である事に首を傾げた。 「……あたたたたた」  頭を動かすだけで頭痛が酷い。  何がどうなってるんだ。  見える範囲で視線を巡らすと――何処だここ。  知らない場所だった。 「おわっ!?」  よく見ると潜り込んでいたベッドのシーツは目に優しくないパッションピンクだし、変に光沢がある。  ていうか服すら着ていない。  ――ということに気づいた瞬間、全てを思い出した。  そう、全て。  バッ!っと横を見るが、そこはもぬけの殻だ。  待って、久野さんは?  見える範囲には居ないようだ。もしかして良くドラマとか漫画で見る、置いてけぼり…?ていうか今何時!?  ベッドボードにある時計は、AM8時22分と表示されている。今日は講義が昼からなので余裕だ。  と、時計の横にメモ帳が置いてある事に気づいた。よく見るとそこに何か書かれている。 「……『仕事なので先に出ます。C.O.は10時。支払済。―企業戦士「五百円」』……」  見事置いてけぼりだが、確かに今日は木曜日だし企業戦士なら仕方ない……じゃなくて! 「企業戦士五百円て……冗談なのか皮肉なのかわかんないんですけど」  自己紹介の時もそうだったが、淡々とし過ぎていて何を考えているのか分からないところがある。  とりあえずまだチェックアウトまでは時間があるらしいので、知夏は身支度を整えることにした。  ……ていうか初めてだったんですけど。  それがこんななし崩しで、しかも朝は置いてけぼりなんて。  身体は違和感はあるものの、何処かが痛いとかは特にない。日頃から良い声を出すために柔軟しているおかげだろうか。  それとも、大事にしてくれた、とか。  ――いや、ないな。向こうも完全に酔っ払ってた。  確かに疑似恋愛のつもりで合コンに参加したのはしたが、まさか本当にこんなことになるとは。  いや、こんなのは恋愛なんかじゃない。だって特にメモに連絡先が書いてある訳でも――ない。  恋愛漫画とかでは、ここで連絡先が書いてあって、連絡するかしないか、連絡が来るか来ないかでヤキモキして、痺れを切らした相手側が迎えに来たりとかするもんだけど。 「そんなのすら無いだろうしなぁ」  知夏が思い描いていた恋愛のはじまりとは、天と地ほどの差がある出来事。現実の恋愛って、もしかするとこんな感じのアッサリサッパリしたものだったりするのかもしれない。  久野は、恋愛に夢見すぎってことを知夏に伝えたかったのかもしれない。  知夏はシャワールームに向かいながら、思わず自分の曲を口ずさむ。飲み会で始発帰りだった時の曲だが、なんだか今の気分とシンクロして、未だかつて無いほど感情を込めて歌えた気がした。 『朝焼けBAD DAY』 鍵が見つからない 酩酊の奥 朝焼けのオレンジに照らされて 夢も見あたらない カバンの底 ようやく手にした My life's key 全然美味しくない酒を 浴びるように飲んだ夜 グラデーションしてまた朝 お日様は誰の味方? 朝焼けBAD DAY 泣きだしそうな空が いつもの日常 タイムループさせてる なけなしGOOD FEEL 泣きたいような気分 逆走してる僕 世の中に逆らって 生きて行けるほど 強くなんかなれない
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