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ロロには動植物と心を通わす能力があること、植物を成長させたり、品質を強化できる能力が強いことがはっきりとして、ミツカはこれが魔力と結論付けた。魔力を持つのは本来貴族以上、ましてや自然に干渉できる能力など度を越している。そう思いながらもミツカは大っぴらに使わないことを注意しつつ伸び伸びと育てた。ミツカは腕利きの占い師。信条は『関わったのなら最後まで』。
「ミツカ! ミツカ!」
いつも元気な娘だが、今日はちょっと趣が違う。焦っているような、驚いているような声だ。窓からのぞくと玄関先で真っ白い封筒を手に興奮しているのが見えミツカはとりあえず入ってこいと手招いた。
すぐにポニーテールの髪を揺らしながら中に駆け込んできたロロは興奮冷めやらぬといった様子で何があったか語りだした。
「大きな、物凄く大きな光る鳥が飛んできたの! 空色の瞳がキラッとしたと思ったら私の方に降りてきて、私、びっくりして頭を抱えてしゃがんだわ。そうしたら頭の上にパサッて。顔をあげたら鳥はいなくて、このお手紙があったの! こんなの初めて!」
そんなの確実に魔法を使ったものじゃないか。ミツカはロロの手にある便箋を見つめる。雪のような真っ白い封筒に透かして見える花の模様。それを見てミツカは息を呑む。
「ミツカ?」
様子がおかしいことに気付いたロロが不安そうに見つめてくる。ミツカは努めていつも通りに淡々と口を開いた。
「その封筒の花模様、見憶えないかい?」
「花? 本当だ。模様があったんだ……あれ、どっかで……あ!」
ロロはぐいっと胸元を開いた。ロロの胸の中央辺りには生まれつきと思われる赤い花の痣がある。5枚の花弁、木の枝と草の葉っぱが混ざったような模様がある。全く同じだ。
「え、どういう、こと……」
得体の知れない恐怖に顔を強張らせるロロを静かに見つめ、ミツカは手紙を指差す。
「とりあえず、開けてみな」
「えぇ!?」
「大丈夫、嫌な感じはないよ」
恐る恐るロロは封筒の封を切る。1枚のカードが滑り落ちた。
『12歳の誕生日、おめでとう。愛する娘の幸せをいつも願っている』
「や、やだぁ、私の誕生日は3か月も先じゃない。間違いだよ、ね、ミツカ」
無理やりはしゃごうとするロロに近寄り、ミツカはぎゅっと抱きしめた。いつかそんな日が来る気はしていたが思いのほか動揺している自分を落ち着かせるためでもあった。
「これが、あんたの本当の親からだとしても、私とあんたの関係は変わらないから。ロロ。大丈夫だよ」
「ミツカ、ミツカぁ!」
泣き出すロロを宥めながらミツカはそっと目を閉じた。動揺しないわけがない。今まで音沙汰なかった肉親から唐突に愛情が籠った手紙をもらったって簡単に受け入れられるはずもない。ああ、だけど、ミツカは最初から予感していたのだ。この子が本来の場所に帰るまで守るのが役目だと。
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