赤い花が揃う時

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赤い花が揃う時

 馬車を拾えたミツカ達はその日の内に孤児院に着けた。情報は少ないが有益だった。男物のマントに包まれていたこと。殴り書きされたメモはインクが擦れて殆ど読めず辛うじて読めた文字からロロと名前を付けたことがわかった。  「なるほどね、あの騎士があんたをここに連れてきたんだ」  ミツカは頷き、急き立てるように孤児院を出た。余裕がない様子にロロは不安げに足を速める。  「……嫌な予感がするんだよ」  裏付けるようにロロも動物達から言葉を受け取って顔を強張らせる。  「ミツカ、私くらいの女の子が片っ端から変な男に攫われかけているって」  魔術の鳥が飛んだことで姫が生きている可能性を恐れたアウゼンスターが色合いが同じ子どもを捕まえるように命じたのだ。それを知る由もないが危険性だけは強く感じたミツカは舌打ちした。  「最悪、力を使って逃げな」  「ミツカが逃げれないのは嫌!」  「バカ! あんたが無事じゃなきゃ意味がないんだよ!」  𠮟り飛ばしながら、駄々をこねながら2人は走る。けれど、不意に目の前の道を塞がれた。灰緑色のフードを被った男達が5人、じりじりと近寄ってくる。ミツカがロロを背に庇い睨みつけるも怯む様子はない。相手が剣を抜く。このままではミツカが殺される。竦んだロロは力をうまく使えない。  「誰かっ、誰か助けてっ‼ ミツカを守って‼」  どぅっと風が吹き荒れた。男達は空高く吹き飛ばされ、次々と地面に落ちて沈黙した。あっけにとられる2人の前にどこからか現れた黒髪の少年が静かに跪いた。胸元に添えた右腕に赤い花の痣を見て取る。  「参上遅れましたこと、心よりお詫び申し上げます。私はあなたの守護司フォドル。王国の春の歌ロサロニア姫、お迎えにあがりました」  呆然と立ち尽くしながらロロは理屈じゃなくわかるというミツカの言葉を実感していた。目の前に跪くフォドルが自分のいわば半身なのだと理解している自分に驚く。ミツカが苦笑を浮かべて跪く。  「王族の守護司にご挨拶申し上げる。私はミツカ。占い師でありこの子の養い親だ。私はこの子の安全と幸せを心より望む」  「もちろんです。姫君、このまま城へ向かっても良いでしょうか?」  「あの、突然姫と言われても実感が湧きません、けど、ミツカも守ってくれるなら、行きます」  「それがあなたの願いなら」
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