占い師ミツカと養い子ロロと届いた手紙

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占い師ミツカと養い子ロロと届いた手紙

  ここはサマハザンフィル王国の辺境の町、スリシープ。あまり栄えてはいないが、農作物が良く育ち、家畜も質が良い。近くには薬草を採取できる森がある。中央の街へ向かう道すがらに異国の商人が立ち寄ることもあるので辺境でありながら立ち居振る舞いが洗練とされているのが他よりも秀でているといえるだろうか。  この町には占い師がいる。ミツカと呼ばれる肩の上でバッサリと切った水色の髪、ローズクオーツの瞳が印象的な30代の女性だ。一般的なイメージとは違い、身軽な格好を好み少々露出が多い。タロットカード、水晶などの道具も使うこともあるが相手を見ただけでぴたりと言い当てる技量は知る人の中ではかなり広範囲に名前を馳せている。その傍らに幼い少女がいる。ピンクゴールドの緩く波打つ髪にアクアブルーの瞳。ちょうどミツカの髪と瞳の色を交換したような色合いだ。  少女の名はロロ。9年前にミツカが孤児院から引き取ってきた子ども。いきなりようやく歩き始めたような子どもを連れて戻ってきたミツカに周囲は驚いたがミツカは肩を竦めてこう答えるのみ。  「この子は守らなきゃいけないんだよ」  周囲の協力もあってロロは無事に育っていった。ロロには不思議な力がある。それに気付いたのは5年前だった。  お手伝いをしたがる年になり、じょうろで水やりくらいは良いだろうと任せた。すぐにロロが転がるように駆けこんできた。  「ミツカ! お花さんがおっきくなった!」  「は?」  本来は10cmほどの薬草が身長163cmのミツカが仰ぎ見るほどに巨大化し風に靡いている。怒られるかとびくびくしているロロを肩越しに見やり、もう一度巨大化した植物を見つめミツカは悩みながら口を開いた。  「ロロ、あんたなんかお願い事した?」  「お願い事?」  「んー、水やる時に声かけた、とか」  「お水いっぱい飲んでおっきくなーれ、って」  「あー……なるほど?」  その通りの大きくなったというわけか。この大きさで効果も変わらなければ作れる薬の量も増える。確認は必要だろうが結果オーライと言えなくもないはずだ。ミツカはとりあえずロロの頭をぐりぐりと撫ぜた。  「今度は、素敵なお助けの草になーれってお水やってもらっていいかな?」  「うん!」  怒られずに済んでホッとしたロロがるんるんと水やりを再開する。訳ありとは思っていたがここまでとは。もちろん、巨大化した薬草も品質は変わらず、寧ろ良くなっており、声掛けを変えた薬草はどれも高品質に変化することが明らかになった。ミツカの作る薬はますます評判が良くなって方法を知りたがる人が増えるもミツカはミステリアスな笑みでたった一言。「企業秘密よ」
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