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「塩崎さん、君の資料は丁寧でいつもわかりやすい。」
そう言って、私の作った資料を掲げて微笑むのは、私の上司にあたる主任の高畑康介。
にこりと爽やかに微笑まれ……
「あ……りがとう…ございます…。」
胸がドキドキして落ち着かない……。
私、塩崎真琴は、人生初の一目惚れをしてしまいました。
好きな人ができた。
きっかけなんてそんなもの。
私は人知れず決意したのです!
最近体重計に乗ってないけど、最後に乗ったときの体重は108キロ。
煩悩の数と一緒だぁ……なんて。
そんなことを思ったから、ちゃんと覚えてた。
この煩悩を削ぎ落としたら……
痩せたら……
高畑主任に告白するっ!
心に強く誓いを立てて。
その日から、食べる量を減らして、電車は使わずアパートから会社まで一時間かかるけど、歩いて通勤するようにした。
もちろん間食なんてダメダメ!
……と、いうことで……
最初の三日間は頑張れたんだけど……
もともと努力とか、継続とか、苦労とか、苦手なのよ…。
苦手で自分に甘いから、こんなおデブに……お肉の塊になっちゃったんだろうけど……
ダイエット四日目にして、挫けてしまいそう。
……ダメだ……
甘いもの食べたい……
お肉食べたい……
ケーキ食べたい……
お腹空いたし、体は筋肉痛で痛いし……
空腹と痛みと戦いながら仕事を終えようとしたら……
「…塩崎、ここ入力ミスしてるんだけど修正いいか?」
「えっ?」
隣の席の先輩、澤田修二から、いくつもの箇所を蛍光ペンでチェックされてる書類を、すっとテーブルの上へ置かれてしまう。
「……こんなにミスしてるなんて……。」
あー、もうっ!
私のバカッ!
お腹が空いて、体が痛いせい?
集中力散漫もいいところ。
仕事に影響出しちゃうなんて、社会人としてダメじゃん…。
「……すみません…。」
自分の不甲斐なさに自己嫌悪…。
「…ちょっと飲み物でも飲んで、気持ち切り替えようぜ。俺も休みたいと思ってたところだし。ほれ、行くぞ。」
ポンポンと私の肩を叩き、席を立つ澤田さん。
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