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「あやちゃ〜ん、今日もかわいいねぇ〜。ねぇねぇ、一緒にホテル行こうよ〜、この店では、後あやちゃんだけだよ〜」
真ん中に座る顔立ちの整った男が、隣に座るキャストの女性へベタベタくっついている。
あやと呼ばれた女性の表情からは、嫌悪感を隠した苦笑いがいじみ出ていた。
「ちょっとやめてください。」
その心細い抵抗は、男には何一つ通用せず、仕切りにホテルに行こうとか、触らせてくれ等しつこくせがんでいる。
周りにいる女性は口を出すことはなく、舎弟と思われる男達はその行為に対してはやし立てる。
「そのお胸は、どんな形してるのかな〜?」
男の手は、あやの胸へと伸びていく。
「やめて下さい!!」
あやは、男の手を払い退ける。
だが、それはこの場ではしてはいけない事だった。
「お前…何?死にたいの?」
男の目から、殺気が放たれる。
「ひっ!!」
あやは恐怖し、顔が引きつる。
「嘘だよ〜、こーんなかわいいあやちゃんを殺す訳ないじゃ〜ん。でも、少しむかついたかな。」
「そうだ!!兄貴に謝れ!!」
舎弟の一人が、あやに兄貴への謝罪を要求する。
「あ?」
「あ…兄貴?」
その言葉を吐いた舎弟へ、さっきより強い殺意を込めた睨みが向けられる。
と同時に、
ゴン!!
男の長い足が、舎弟の顔面を踏みつける。
そして、兄貴と呼ばれた男は舎弟の顔がぐちゃぐちゃになるまで、何度も足を振りおろし続ける。
「あースッキリした。ねぇあやちゃん、胸触らせてくれてもいいよなぁ?」
「は…はい。」
あやは、地面に血だるまで転がる舎弟の姿を見て、もしこの男に背いたら、自分もこうなると思った。
その時、スーツ姿の初老の男性が、この殺伐としてテーブルへ駆けつける。
「お客様、当店はお触りと暴力行為は禁止です。」
「何だよ店長邪魔すんなよ。今までよかったじゃんか?」
「許した覚えはありません。」
「えぇ〜、そうなの?」
先程まで散々舎弟を殴ってスッキリしたせいか、店長の言いつけには、まだ激怒する様子はなかった。
「それに、いい加減に店のツケを支払ってもらえませんか?」
ツケというのは、未払いの飲食代。その通称である。
「つけー?そんなもんあったかな?」
とぼける男に対して、店長は我慢の限界だった。
「お前!!本当にえぇ加減にせ」
ガキン!!!
店長が全ての言葉を言い切る前に、男の拳が店長の顎を殴る。その拳には、金属性のメリケンサックが握らていた。
「ゴッ…!!ガッ!!」
「店長!!」
店長の顎は砕け、口の中は血で満たされ溢れた血が床に広がる。
「誰に向かって口聞いてんだ?あ?」
男は店長の髪を掴んで持ち上げる。
「前にもいったよな?俺は、横浜を仕切る三国同盟の幹部、青のチームのリーダー如魏(キサラギ)ってよー、俺がこの街で一番だ。
だったらお前みたいな雑魚共と女は俺に逆らう訳ねぇよなー。」
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