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横浜少年院から、少し先に行った閑静な住宅街。
そこから横浜市内へと向かうワンマンバスが出ている。
バスは、横浜市内の桜木町駅へと向かっていて、
バス車内に掲示されている路線図を見て確認できた。
その車内の一番後ろの席で、頭にフードを被り、バス後方を眺める男がいた。
相良剣一21歳、砂色のフード付きの上着、黒いTシャツに、グレーのカーゴパンツを身につけている。
しばらく、後方を確認していたが。
その風景は、普通の車が行き交い、歩道では人が何事無い様に移動していて、ごく普通の街並みの様子だった。
怪しい人物や執拗に追跡してくる車やバイクの姿は確認できない。
相良「今度こそ、本当に逃げ切れたみたいだな。」
後方を眺める事をやめ、5列に並んだバスの座席の一つに、安堵した様子で深く座る。
ふと、右斜め前に座る二人組の女の子が、こちらを見ている事に気がついた。
一人は、派手な金髪にストレートヘア、もう一人は、黒髪にセーラー服を着用している。
二人とも、18歳前後ぐらいだった。
相良は、二人がこちらを見ている事は気になったが、それとは別の事を考えていた。
少年院で6年間生活する中。当然の事だが、職員も、同じ少年院にいる収容されてる人間は全て男で異性を見るのはかなり久しぶりだった。
しかも、この二人は顔立ちも整っていて可愛い。
その二人から熱い視線をうけ、逃走していた時よりも相良は胸が高鳴っている。
妙なドキドキが止まらない
「あのー」
相良「えっ!!あッ!!えっーと、はい、俺?」
相良は慣れていない…というか、あまりにも異性との会話が久しぶりすぎてアタフタしてしまう。
女の子の一人はコクッと頷き、その細く白い指を相良に向ける。
相良「えーと、あっ!!」
相良は、指は自分に向けられているのではなく、先程拝借した砂色の服の事を指していると気がついた。
相良「ご、ごめ、あ、いや。…」
相良は深呼吸をして、一旦気持ちを落ち着かせる。
相良「勝手に借りてすいませんでした。これ、お返しします。」
服を返そうとフードをとった時、相良の素顔を見た女子の胸も自然と高鳴る。
少し、茶色ががったツンツンの短髪に、細い輪郭につりあがった眉に、少し大きめの目。
つまり、世間で言うとこのイケメンだった。
イケメンを前に、女子のハートがキュンキュンする事は当たり前の事だった。
「あ、いや、えっとその、ー」
女子もアタフタしてしまう。
「あ、あの。」
相良「え?」
「よかったら、その服いります…か?」
相良「えッ?いいの?」
「はい…その服、メルカルで買ったんですけど、メンズ用だったので…」
相良「メルカル?間違ったって事?」
「はい…」
相良「じゃあ…本当に貰っていいの?」
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