#1 横浜市桜木町

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この砂色の服は、かなり機能的である。 顔を隠せるフード、ポケットは前に4つと両腕に2つ、更に内側にもついている。 通気性もよく、肌触りもいい。 生地はストレッチ性に長け、撥水加工も施されている。 デザインも派手ではないが、その分、着こなししやすいシンプルな物だ。 相良は少し遠慮はするが、この上着を頂けるならとてもありがたい。 黒髪の女子は、小さく頷き、本当に貰ってもいい事を表現した。 すると、相良は嬉しそうに笑った。 相良「ありがとう!!まじで助かります!!」 その無垢な笑顔に、女子は頬を赤く染めた。 「ねぇねぇお兄さんはあの辺の人?」 隣に座っている金髪の女子が、相良に問いかける。 雰囲気は黒髪の女子とは対照的で、派手で明るい子という印象だった。 しかし、この質問はどう答えたものか? あの辺というのは、このバスに乗り込んだ場所の事を指しているのだろう。 しかし、少年院から出たばかりとは言い憎い。 適当に最近引っ越してきたとか、友達の家に泊まりに来ていたなど、嘘を付く事は簡単だが、それも良いとは言えない。 相良は少し考えたが、やはり正直に答えようと思った。 嫌われるかもしれないが、それはそれで仕方がない。 相良「今日…少年院から出てきたんです。」 流石に引くよな。 と思ったが、女子の反応は思っていた事とはちがう。 「えぇ!!そうなの!!ねぇなにやったの!!」 女子は驚きつつも、興味深々に相良に質問を続けた。 引くどころか、更にグイグイとくる。 だが、流石に30人殺した殺人者ですとは言えない。 相良「それは…ちょっと…」 「お兄さんはもしかして…相良剣一じゃない!!ほら、ヤンキー30人殺った!!」 無駄だった。 その女子の声は大きくバス中に響き渡り、他の乗客も白い目でこちらを見てくる。 「ちょっと声が大きいよ…」 黒髪の女子が、静かな声で金髪の女子を注意する。 金髪の女子はハッとして、手で口を抑える。 相良は人違いと言えばよかったのかもしれないが、なぜこの子が自分を知っているのかが気になった。 相良「あの…なんで知ってるんすか?」 相良も小声で質問をする。 「やば、えッ本物なの?やば、」 女子は興奮のあまり会話になっていない。 相良はもう一度質問する。 相良「だから、その、なんで俺の事知ってるんですか?」 「あっごめん。だってお兄さん地元じゃすごい有名だよ。」 相良「有名?」 「そうそうそう。ヤンキー30人をたった一人で皆殺しにした超強い人って。」 相良「それは、そうかもしれないけどさ。なんで、嬉しそうなの?」 「だって、お兄さんのおかげで、地元はすっごい平和になったんだよ。あれからヤンキー連中はめっちゃ静かになってぇ。うちが高校の時は、ヤンキーがめっちゃ偉そうにしてたけど、あの事件から静かになって、ヤンキーしてたら相良に殺されるーとかいわれてたみたいで。地元の人は皆相良君に感謝してるんだよ。ねぇ。」 「うん。」 隣の女子も肯定した。
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