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相良「そう…なんだ。」
「でも、最近じゃヤンキー連中がまた勢いづいてさ。去年に横浜でも色々あってさぁ、ヤクザがいなくなっちゃんだよね。」
相良「ヤクザがいなくなった?何か関係があるの?」
「ヤクザは、ある意味ヤンキー連中からすると邪魔者だったんじゃない?それがいなくなった途端、ヤンキーというか半グレ連中が一気にイキリ立って今ではやりたい放題、警察も手を焼いてるぐらいだって。」
相良「まぁ、そりゃそうだよね。」
少年院前に群がっていた連中の規模を思えば、それは納得できる話だった。
ヤクザという厄介な抑止力がなくなり、勢力も拡大その結果は先程の大勢のヤンキーグループでわかる。
「そんな状況だから、町の人達は思い出したんだよ。6年前にヤンキーを一人で倒した伝説の高校生相良剣一をさ。
だからお兄さんは有名になってるんだよ!!」
相良「…」
相良は沈黙する。
恋人である北村香奈を助ける為に、30人を結果的に殺してしまった事を正しいとは少しも思っていない。
なぜならば、その事件で自分は少年院に入り、北村香奈は自殺をした。
何も良い結果で終わっていない。
後悔しかない結果。
だが、この女子の話は、ヤンキーや半グレ、街に溢れる迷惑な連中を殺してほしい。
まるでそういうふうに受け取れる。
正しい事、間違った事、相良はその判断に心を痛めてしまう。
「ねぇ、もうやめようよ。」
「あっごめん、そうだよね。なんか変な期待しちゃって」
相良の重たい表情に、二人は相良の気持ちを考えていない事に気がつき、話を終わらせ謝罪をした。
「ねぇお兄さん連絡先教えてよ!!その服のお礼に!!」
女子は派手に装飾されたスマホを取り出して、相良に差し出した。
画面には、緑色の背景にバーコード表示がされていた。
相良「ごめん、俺スマホ持ってないんだ。」
「えっ!!まじで!!でもそっかぁ、今日出てきたばかりだもんねぇ。残念。」
女子は残念そうに、スマホをカバンに戻す。
少し悪い事をしたように思う。
相良はこの服をもらい、更に自分に関する街の情報、そして気さくに話しかけてくれる女子。
その会話は、どこか心地いいものだった。
にもかかわらず、自分はこの子達に何もできていない。
その事が少し不憫に思えた。
しばらく、そんな相良の内情とは裏腹に、女子は気さくに話しかけてくれる。
こちらが気にしすぎたと思える程だった。
バスの窓から流れる景色を見ながら、会話は続いてバスは進む。
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