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あっという間に時間は過ぎ、バスは目的地の桜木町へと到着する。
二人組の女の子もここで降りるらしく、相良の後に続いた。
バスを降りた先は、6年前と大きく変わらない街並だった。
灰色の建造物が敷き詰められ、色とりどりの看板や電光掲示板、車の行き交う音、人混み。
少しだけ、変わったかもしれないが、その光景は懐かしくもあり、少年院という閉ざされた空間から、自由という街へ戻ってきた事が実感として湧いてくる。
「相良君は、ここから電車に乗るの?」
相良「そうだね。俺の家は電車の方が早いから。」
一番最初の目的は、香奈の墓参りへ行く事。
全てはそれからだ。
元の生活に戻る事も、何もかもは香奈に一言「ごめん」と伝えてからと、そう考えていた。
墓参りには、手ぶらで行くわけにはいかない。
ある程度のお金はある。まずは実家に戻って、それなりの準備をする必要がある。
実家は、ここから電車で10分程度移動した場所だ。
相良「それじゃ俺はこれで。色々とありがとう。」
「うん!!元気でね!!次会った時はスマホ持っててよね!!」
金髪と黒髪の女の子は手を振る、こちらも軽く手を振って別れの挨拶を行う。
可愛かったな、もう少し仲良くなればよかったかな?
…
だめだ。
俺があの子達と仲良くなる事は、あの子達が危険になる。
巻き込むわけには…いかない。
俺は不良グループに狙われている。
もし、ここで仲良くでもなったら、奴らに利用されてしまうかもしれない。
また6年前ち同じ事が起こってしまうかもしれない。
幸いにも、今の俺に親しい人間といえば、両親と北村さんだけだ。
それ以外には友人といった存在もいない。
孤独である事が、一番都合がいい。
そんな事を考えながら、駅の切符売り場へと向かうため、正面入り口の階段に足をかけた。
その時
「やめてください!!」
聞き覚えのある声が聞こえた。
この声は、先程まで一緒にいた女の子の声だ。
「なぁ。もう一度聞くけどこいつ知らない?知らないんだったら一緒に探そうぜ。」
明らかに柄の悪い男3人が、女の子に詰め寄る。
その内の一人は、坊主頭で他の2人よりも体格が大きい男。その腕が女子の腕を掴み、もう一つの手で一枚の写真をかざしていた。
写真はここからではよく見えない。
「そんな人知りません!!」
「そんな事ねぇだろ?こいつ有名だぜ?30人殺しの凶悪殺人鬼、相良剣一だよー。」
「相良…剣一…」
「そうだよ、どこで見たかいってくれたら、怖い思いしなくてもいいんだぜ。」
「…」
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