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尾賀「俺の言う事が聞けねぇんなら、しばらく動けないぐらい痛い思いをしてもらおうか。」
相良「…なんなんですかいきなり…でも、ヤロウってんなら、こっちも手加減しませんよ。」
尾賀「おう…望むところだ、このクソガキ!!」
完全に喧嘩をする流れになりつつある相良と尾賀の二人。
聡美「イチ!!やめなよ!!」
キョウチョウ「兄貴も落ち着いてください!!」
それを止めようとする二人。
相良と尾賀が本気で喧嘩をし始めたら、恐らく聡美とキョウチョウでは止めることは難しい。
バシャ!!
その時、二人の頭へ水がぶっかけられる。
マスター「尾賀、少しは頭を冷やせ。いい大人が、年が下の若ぇ者に喧嘩ふっかけるもんじゃねぇよ。」
水はマスターからだった。
その水は、氷と水が満タンに入ったピッチャーボトルの水だった。
とても冷たい。
尾賀「…頭…冷やしてくる。」
尾賀は濡れた状態のままで外へ飛び出していった。
聡美「イチ!!」
聡美は後を追いかける。
マスター「ほらよ。」
マスターは、そこに残る相良へとタオルを差し出した。
相良は黙ってタオルを受け取り、頭を拭く。
マスターは濡れた床を拭きながら、相良へ話を始める。
マスター「全く、いつの時代も同じ様な事があるもんだな。相良、尾賀は不器用な男だ。お前の事を心配しているだけなのに、言葉尻が強くなっちまう。
まぁ尾賀の言う事も別に間違っちゃいねぇ、それはお前もだ。年相応の危なかっしさってのがあるが、若い時はそれでいい。
結局、どっちが正しくて、どっちが間違ってるかなんてのは、結果が出た後もわからねぇ。」
相良「…」
マスター「だから、テメぇの経験や価値観で物事を決めちまう。特に大人はな。」
相良「…」
床を拭き終えたマスターはカウンターの中へ移動する。
マスター「本当に笑えてくるぜ…昔、俺にも似たような事があった。そん時、最初は俺が正しいと思った。
だが、後でよく考えて見れば後悔しかしてねぇ、自分にはもっと何かできたんじゃねぇか?とか、今の自分じゃどうしようも出来ねぇとかな。」
相良「後悔…ですか…。」
マスター「あぁそうだ。昔、俺が面倒見てた若いのが仕事でしくじっちまってな。その責任を、まだ20だったガキが一人で背負い込んだ。
俺は正直、そんなガキが一人で何か出来る訳はねぇと思って半殺しにしてでも止めようと思ったさ。今の尾賀みたいにな。
だが、そのガキは結局正しかった。自分一人で突っ走って、色んな人間に迷惑をかけはしたが、結局最後には自分で全てにケリをつけて、筋を通した。
その生き様に多くの人間が憧れていったもんだ。」
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