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ここは、歌舞伎町じゃ…無い。
それじゃ、俺はどこに向かってたんだ?
その瞬間から、一気に疲れが湧いて来た。
もう、何でもいいや。
…
とりあえず、ゆっくり休める場所を探そう。
そう思っていた時だ。
「おーいタクシー!!ここだぁー!!」
道路の端から、大きな声で中年の男性がタクシーを呼び止める。
黒塗りのタクシーが停車し、男性を乗せてどこかへと移動していった。
相良「タクシー…そうだ。タクシーだ!!」
何故それを思い付かなかったのか、自分が馬鹿に思えてくる。
擬音だけで道案内をしたオヤジの事を信じるんじゃなくて、この一帯を把握しているタクシーに頼ればよかった。
俺は、すぐに道路の端に行きタクシーが通るのを待つが、俺より前に、横でタクシーを待つ男性がいた。
俺はその人の次だろう。
1〜2分後、道路の向こうから、こちらへUターンしてくるタクシーを発見。
先に待っていた男性が手を振るが、タクシーは男性を無視して、俺の前に止まり、後部座席のドアが開く。
どうしたものかと思ったが、横の男性を気にしながら、中へと入る。
???「どちらまで?」
運転席に座る男性が、低い声で行き先を尋ねる。
その男性は少し強面な印象で、黒いサングラスをかけていた。
相良「あのすいません、あそこにいる人が先にタクシーを待ってましたけど、大丈夫ですか?」
サングラスの男性は、バックミラー越しにその男性を確認した。
???「はい…あの方は、他のタクシーを待ってる方です。」
すると、また別のタクシーが男性を乗せている事を確認した。
でも、俺はまだ手を上げてはいなかったよな…
まぁいいか。
結果はオーライだ。
???「それで、どちらまで行きましょうか?」
低い声とゆっくりとした口調で、再び行き先を聞かれる。
相良「歌舞伎町までお願いします。」
???「かしこまりました。」
ドアが閉まり移動を開始する。
運転手の名札がダッシュボードの上にある事に気がついた。
その名札には、鈴木大一と記されていた。
鈴木「歌舞伎町へは、どういう目的で?」
相良「あぁ…」
なんと言えばいいか、
自分の親の行方、東誠会、東誠警備
どれも説明するのが面倒だ。
ここは、無難に観光と答えよう。
相良「観光で…」
鈴木「お一人で?」
相良「えっと…まぁ、はい。」
鈴木「という事は、女遊びでしょうか?」
相良「いやいやいや!!そうじゃないっです。…はい。」
鈴木「恥ずかしい事はないですよ。歌舞伎町はそういう町ですから。」
相良「そ…そうですか…」
すると、タクシーが道路の端により停車し、後部座席のドアが開く。
相良「えっ?もう着いたんですか?」
鈴木「はい。ここが、夜の町…日本最大の歓楽街…歌舞伎町です。」
ーーー
というのが、横浜を出て、ここに至るまでの経緯だ。
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