#1 東京 歌舞伎町

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ここは、歌舞伎町じゃ…無い。 それじゃ、俺はどこに向かってたんだ? その瞬間から、一気に疲れが湧いて来た。 もう、何でもいいや。 … とりあえず、ゆっくり休める場所を探そう。 そう思っていた時だ。 「おーいタクシー!!ここだぁー!!」 道路の端から、大きな声で中年の男性がタクシーを呼び止める。 黒塗りのタクシーが停車し、男性を乗せてどこかへと移動していった。 相良「タクシー…そうだ。タクシーだ!!」 何故それを思い付かなかったのか、自分が馬鹿に思えてくる。 擬音だけで道案内をしたオヤジの事を信じるんじゃなくて、この一帯を把握しているタクシーに頼ればよかった。 俺は、すぐに道路の端に行きタクシーが通るのを待つが、俺より前に、横でタクシーを待つ男性がいた。 俺はその人の次だろう。 1〜2分後、道路の向こうから、こちらへUターンしてくるタクシーを発見。 先に待っていた男性が手を振るが、タクシーは男性を無視して、俺の前に止まり、後部座席のドアが開く。 どうしたものかと思ったが、横の男性を気にしながら、中へと入る。 ???「どちらまで?」 運転席に座る男性が、低い声で行き先を尋ねる。 その男性は少し強面な印象で、黒いサングラスをかけていた。 相良「あのすいません、あそこにいる人が先にタクシーを待ってましたけど、大丈夫ですか?」 サングラスの男性は、バックミラー越しにその男性を確認した。 ???「はい…あの方は、他のタクシーを待ってる方です。」 すると、また別のタクシーが男性を乗せている事を確認した。 でも、俺はまだ手を上げてはいなかったよな… まぁいいか。 結果はオーライだ。 ???「それで、どちらまで行きましょうか?」 低い声とゆっくりとした口調で、再び行き先を聞かれる。 相良「歌舞伎町までお願いします。」 ???「かしこまりました。」 ドアが閉まり移動を開始する。 運転手の名札がダッシュボードの上にある事に気がついた。 その名札には、鈴木大一と記されていた。 鈴木「歌舞伎町へは、どういう目的で?」 相良「あぁ…」 なんと言えばいいか、 自分の親の行方、東誠会、東誠警備 どれも説明するのが面倒だ。 ここは、無難に観光と答えよう。 相良「観光で…」 鈴木「お一人で?」 相良「えっと…まぁ、はい。」 鈴木「という事は、女遊びでしょうか?」 相良「いやいやいや!!そうじゃないっです。…はい。」 鈴木「恥ずかしい事はないですよ。歌舞伎町はそういう町ですから。」 相良「そ…そうですか…」 すると、タクシーが道路の端により停車し、後部座席のドアが開く。 相良「えっ?もう着いたんですか?」 鈴木「はい。ここが、夜の町…日本最大の歓楽街…歌舞伎町です。」 ーーー というのが、横浜を出て、ここに至るまでの経緯だ。
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