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「今は興味ないかもしれんが、その気になったらいつでも声かけてくれや!!」
男は、ジャケットの胸ポケットから一枚の名刺を差し出してきた。
相良「多義ボクシングジム?」
「せや!!わしはそこでトレーナーやってんねん!!連絡待っとるで!!」
相良「はぁ…」
「じゃね。」
「ばいばぁーい。」
そう言って、女性と男は何処かへと移動していった。
それにしても、騒がしい人だった。
多義ボクシングジム…か。
本当にやる事が無かったら、考えてみてもいいかもな。
さて、女性が教えてくれたプレミアムタワーにいるであろう東誠警備の人間に会いに行ってみるか。
ただ、実際に会ったとして、何を聞けばいいだろうか?
東誠警備の場所を調べていたのは、関係者に会う為だ。
だが会ってどうする?
俺の両親を殺したのは誰ですか?とでも聞けばいいのだろうか。
だが、それを聞いたとしても、そうですと言う筈はない。
思考を巡らせていたら、プレミアムタワー正面に到着する。
近くで見たら、その大きさはより一層際立っていて、まるで宇宙に届きそうだ。
…それは言い過ぎか。
周辺を確認すると、正面ゲートには数名の制服を着た人間が周囲を見渡していた。
恐らく、この人達が東誠警備だろう。
さて…どうしたものか…
一度立ち止まって、何て聞けばいいか考える。
だが、その様子は警備をしている側から見ると、怪しく見えたのか、警備会社の制服を着た人がこちらへ近づいてくる。
「どうかされましたか?」
相良「あ…えっと…」
突然の声かけに動揺してしまう。
こっちはまだ考えてる途中だってのに…
まずいな、このまま黙ってしまっては、本当に怪しまれてしまう。
…
そうだ。
焦る中、ある事が閃いた。
相良「あの、僕は相良という者ですが、東誠警備の方ですか?」
「えぇそうです。」
相良「実は、僕の警備を依頼されてたと思うんですけど、いつまでも警備の人が来なくって、正直困ってるんです。確認取れますか?」
「それは大変申し訳ございません。すぐ調べますので、恐れ入りますが、フルネームをお伺いしてもよろしいですか?」
相良「はい。相良…剣一です。」
「相良剣一様ですね。しばらくお待ち下さい。」
その警備スタッフは、胸ポケットからガラケーを取り出し、確認の為に電話をかけた。
それにしても、まるでクレーマーじゃないか。
だが、もし俺を狙っているとすれば、何かしらの行動に出るはずだ。
しばらくして、警備スタッフの男性は電話を切り、こちらへと振り向いた。
さぁ、どうする?
俺に接触してくるか、それとも捕らえるようにするか、どちらだ?
「申し訳ございません。当社では、相良剣一様の警護についてはお受けしていないようです。」
相良「えっ?…本当…ですか?」
「はい、本社の方へ確認しても、案件はございませんでした。」
相良「そ…そうですか…」
「もし警護のご依頼なら、当社ホームページから24時間いつでも受付できますので、お気軽にお問い合わせください。」
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