#1 東京 歌舞伎町

7/15
前へ
/89ページ
次へ
「今は興味ないかもしれんが、その気になったらいつでも声かけてくれや!!」 男は、ジャケットの胸ポケットから一枚の名刺を差し出してきた。 相良「多義ボクシングジム?」 「せや!!わしはそこでトレーナーやってんねん!!連絡待っとるで!!」 相良「はぁ…」 「じゃね。」 「ばいばぁーい。」 そう言って、女性と男は何処かへと移動していった。 それにしても、騒がしい人だった。 多義ボクシングジム…か。 本当にやる事が無かったら、考えてみてもいいかもな。 さて、女性が教えてくれたプレミアムタワーにいるであろう東誠警備の人間に会いに行ってみるか。 ただ、実際に会ったとして、何を聞けばいいだろうか? 東誠警備の場所を調べていたのは、関係者に会う為だ。 だが会ってどうする? 俺の両親を殺したのは誰ですか?とでも聞けばいいのだろうか。 だが、それを聞いたとしても、そうですと言う筈はない。 思考を巡らせていたら、プレミアムタワー正面に到着する。 近くで見たら、その大きさはより一層際立っていて、まるで宇宙に届きそうだ。 …それは言い過ぎか。 周辺を確認すると、正面ゲートには数名の制服を着た人間が周囲を見渡していた。 恐らく、この人達が東誠警備だろう。 さて…どうしたものか… 一度立ち止まって、何て聞けばいいか考える。 だが、その様子は警備をしている側から見ると、怪しく見えたのか、警備会社の制服を着た人がこちらへ近づいてくる。 「どうかされましたか?」 相良「あ…えっと…」 突然の声かけに動揺してしまう。 こっちはまだ考えてる途中だってのに… まずいな、このまま黙ってしまっては、本当に怪しまれてしまう。 … そうだ。 焦る中、ある事が閃いた。 相良「あの、僕は相良という者ですが、東誠警備の方ですか?」 「えぇそうです。」 相良「実は、僕の警備を依頼されてたと思うんですけど、いつまでも警備の人が来なくって、正直困ってるんです。確認取れますか?」 「それは大変申し訳ございません。すぐ調べますので、恐れ入りますが、フルネームをお伺いしてもよろしいですか?」 相良「はい。相良…剣一です。」 「相良剣一様ですね。しばらくお待ち下さい。」 その警備スタッフは、胸ポケットからガラケーを取り出し、確認の為に電話をかけた。 それにしても、まるでクレーマーじゃないか。 だが、もし俺を狙っているとすれば、何かしらの行動に出るはずだ。 しばらくして、警備スタッフの男性は電話を切り、こちらへと振り向いた。 さぁ、どうする? 俺に接触してくるか、それとも捕らえるようにするか、どちらだ? 「申し訳ございません。当社では、相良剣一様の警護についてはお受けしていないようです。」 相良「えっ?…本当…ですか?」 「はい、本社の方へ確認しても、案件はございませんでした。」 相良「そ…そうですか…」 「もし警護のご依頼なら、当社ホームページから24時間いつでも受付できますので、お気軽にお問い合わせください。」
/89ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加