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相良「はい…わかりました。すいません。」
これ以上の話は聞けないと思い、プレミア厶タワー前の広場を後にして、街の中を行く宛もなくフラフラと徘徊する。
それにしても、俺の警護を依頼されていないとは、いったいどういう事だ?
やはり、聡美さんが言っていたように、警護と見せかけて、実は自分達の組員を殺した俺への復讐が目的なのか?
だが、それをどうやって確かめる?
プレミアムタワー前の警備員に聞いても解らないのなら、仮に本社を見つけて聞いても意味がない。
あなたの依頼は受けていません。
そう言われて終わってしまう。
それじゃ、いっそ警察に相談してみるか?
…
いや、それもだめだ。
近所のおばちゃんも言ってたが、警察では行方不明という扱いになっている。
行方不明の人が行方不明なので、探して欲しい。
意味が解らない。
…
これ、もしかして詰んでないか?
次は何をすればいいんだ?
どうすればいい?
…
結局、俺にできる事なんて、こんなもんか…
両親を殺したのは東誠会という情報を聞き出せたのも、俺ではなく尾賀さんが聞いてくれたからだ。
それが一人で歌舞伎町まで来て、俺では何の成果も新しい手ががかりも、何も得ていない。
ふと、夜空を見上げた。
都会の明かりに照らされた雲が、ゆっくりと流れている。
虚しい
俺は何がしたいんだ?
…
冷静に考えてみれば、今の俺は帰る家もない、という事は住む場所もない。
これからどうすればいい?
その現実を直視したくないから、こうやってがむしゃらに動いていただけじゃないのか?
ただの現実逃避。
21のガキにできるのは、この程度か…
あぁ…
疲れた。
「お兄さん。お疲れのようですね?」
相良「…え?」
気がついたら、ピンク通りという看板がある路地に来ていた。
突然話かけて来たのは、スーツ姿で、メガネをかけた50代前後のおじさん。
「よかったらマッサージいかがですか?可愛い女の子がサービスしてくれますよ。」
おじさんは店の看板を指差す。
そこには、ラブマッサージというまぁいかにも怪しい店の看板がピンク色に光っていた。
相良「いえ…すいません、今は遠慮しておきます…」
「そうですか、でも珍しいですね。ここはピンサロやホテヘルとかの風俗店ぐらいしかないので、お兄さんもそういうお店を探していたんじゃないの?」
そうだったのか…おじさんの言う通り周りを見渡すと、確かにイヤらしい看板だらけだ。
フラフラと適当に歩いていたら、こんな場所に来てしまっていたのか。
早く離れた方がいいが…ダメ元だ。
このおじさんにも話を聞いてみよう。
相良「その…」
なんて聞けばいい?
もうなんでもいいから、東誠会って知ってるか聞いてみよう。
相良「東誠会って知ってますか?」
「東誠会?この歌舞伎町にいる人間は皆知ってると思うよ。でも、どうして?」
相良「実は…俺の両親が、その東誠会に殺されたかも…しれなくて。」
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