#1 東京 歌舞伎町

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「ええ!?そうなの?親って、組長さんの事?でもお兄さんはヤクザには見えないなぁ。」 相良「あぁ、いや、その親じゃなくて、父と母です。」 「ご両親がかい?それは酷い話だ。それで、東誠会を探しているという訳だね。でも…」 相良「もう、ないんですよね。」 「そう。よく知ってるね。昔はこの歌舞伎町は東誠会のシマ、縄張りみたいなものだったんだよ。沢山の人間が娯楽に飢える街だ、それこそ大きな金も動くし、暴力なんてしょっちゅうさ。多くの店はミカジメ料とか、ケツモチとか主に東誠会に依頼している事は多かった。ただ、それが前に行われた歌舞伎町3K作戦ってのがあってね、それは要するに暴力団関係者の一斉摘発。それで東誠会は歌舞伎町から姿を消した。」 相良「大きい組織だったんですよね?それがそう簡単に?」 「東誠会の中に裏切り者がいたんだ。それが、内部情報を警察に流した事で、正に筒抜け逃げ場なし。」 相良「そうなんですね。」 「まぁ、この町は一時期は平和になったと思った。正直迷惑している人もいたからね、ヤクザが居なくなってよかったと。でも、そうじゃなかった。」 相良「そうじゃなかった?」 「歌舞伎町から、東誠会が姿を消した途端、今度は関西のヤクザ西天連合がやってきた。そいつらは、東誠会以上に好きかって、やりたい放題、その時町の人は思い知ったんだ。…この町を守っていたのは、東誠会だったってね。」 相良「…」 「よくも悪くも、東誠会がいることで、好き勝手する連中や警察ではどうする事もできない奴らが、この町へ手を出して来ない。まぁ、全部が全部じゃないけど、結局、裏ではこの町を守っていたんだ。」 相良「そう…なんですね…」 「それが去年、東誠会は西天に吸収されていたんだが、当時の組長、西天連合の海瀬と東誠会の大國が、警察へ解散届を提出し、今は警備会社を設立した。それが今の東誠警備さ。まぁウチもお世話になってるよ。ただ、今のこの町は前よりも治安が悪くなった。」 相良「…」 「東誠会がいない事をいい事に、地方から利権を狙ってやってくるヤクザ、半グレの若者集団、海外からもあらゆる人間が、この町のシマを争ってる。…おっと!! ついつい話が長くなってしまった、話を逸らしてしまったね…お兄さんのご両親の事だね?東誠会が関係しているかもって言ってたけど、東城会の時だから、どれくらい前だい?」 相良「多分、6年です。」 「そうか…その頃だと、今の東誠警備に分かる人が残っているか…ちょっと怪しいね。うーん、僕も何か力になりたいけど、これ以上は何もできそうにない。すまないね。」 相良「いえいえ!!こんな親切に色々と教えてもらえるなんて、思ってもいませんでした。ありがとうございます!!」 「私も暇してたし、気にしないで大丈夫さ。でもお兄さんはまだ若いから、あまり危ない事に首を突っ込んだらダメだよ。」
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