コール

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 松ヶ丘高等学校は偏差値の高い私立の女子高校だ。都内の交通の便がいいところにあり、生徒の殆は電車かバスで通学している。制服はセーラー服。一月の今は通学のときはコートが決まりになっている。  倉本早苗(くらもとさなえ)はこの学校の一年生だ。成績はクラスで中くらい。中学生のときはトップだったのだが高校は周りの頭が良いのだから仕方ない。早苗の父は医者で祖父が院長をやっている病院で働いている。専門は形成外科だ。早苗はよくいる思春期になったら父親を嫌う女子とは違って父が大好きだ。小さいときは結婚したいなんて言っていたけど、十七歳になった今でも父みたいな人と結婚したいと思う。  今日は冬休みが終わって新年初めての登校だ。早苗は中央線に乗る。車内は混んでいて変に暖かい。吊革に掴まった男性の肘が早苗の顔に触れた。化粧をしていたらファンデーションが付いたと思うが早苗は勿論なにもつけていない。それでも透き通るように色が白いと言われる。  山手線に乗り換える。この電車も混んでいる。家政婦が送迎用の運転手を雇ったほうがいいと言ったが早苗は断った。だが今更ながら後悔する。一時間の満員電車は結構きつい。しかもその後バスがある。それくらいは何ともないという友達もいるが。
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