雪の下のディルク

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 男の子を産んだことで、両親が露骨に舞い上がった上、そんな彼女に散々マウントを取られたのが母にとってはよほど面白くなかったらしい。しかもその男の子は、私の眼から見ても非常に出来の良い少年ときている(そして申し訳ないことに私は女であることを差し引いても平々凡々の頭脳の持ち主である)。ついでに言えば、連夜は伯父さんによく似てかなりのイケメン。伯母さんにとってはどこまでも自慢したい存在なのだろう――特に、子供の頃から確執のある、可愛くない妹相手には。  そう、そういう事情はわかっているのだ。でも。 「お母さんと伯母さんは仲悪いかもしれないけど、私と連夜はそうじゃないんだよ?お母さんだって、連夜が何も悪くないのは知ってるでしょ。あんまり冷たくしないでよ」  そう口にしてしまうのも、仕方ないことではないか。実際、悪いとしたらどこまでも仲良くできないお母さんと伯母さんであって(あとは、男の子の跡継ぎを産んだというだけで伯母さんを褒めまくったお祖父ちゃんお祖母ちゃんにも問題はあっただろうが)、その子供である私達は何の関係もない。そもそも連夜が、母親が何を言おうと関係なく私に優しくしてくれるからこそ、私達子供は親しく接することができているというのに。 「……とにかく、今日はホテルから出ないこと、いいわね。雪で遊びたいなら、明日止んでからにしなさい」 「……はぁい」  母は、私の言葉に反論しなかったが、謝罪をすることもなかった。なんだかもやもやとしたものが残ったが、それでも外に出るなと言われてしまえば小学生の私は従う他ない。東京と違って、この地方の雪が馬鹿にならないことくらい、毎年のことだから私だって知っているのである。  それでもだ。もしお母さんがほんの少し我慢してくれたなら。私もお祖父ちゃんの家に、連夜と一緒に泊まることができたのである。そうして、外で雪が降っていようが関係なく彼等の家で大晦日の夜を連夜と楽しく過ごすこともできたというのに――こんな、微妙に遠いホテルに泊まる必要もなく。 ――子供には散々、仲良くしなさいーとか言うのに。何で大人にそれができないんだか。ほんと、伯母さんがどうだったとしても連夜は関係ないのに!  その少し後で、お母さんが一人でホテルから出かけていったのも非常に不満だった。  人には出るなと言っておきながら、なんとも大人は勝手である。
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