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雪かき機によって頭が損壊してしまったこともあり、連夜の正確な死因の特定は困難を極めたという。唯一の幸いは、その傷に生活反応がなかったこと。機械に巻き込まれた時にはもう、連夜は命を落としていたであろうということだけだった。
恐らく彼は外で遊んでいて転んでしまい、そのまま倒れたところに雪が積もって凍死してしまったのではないか?という話である。運が悪いことに、彼が倒れていたのは人気がない畑の前。その家に住むおじさんも、いえの表はいざ知らず家の裏手の方はまったく様子を見ていなかったという。ひょっとしたら、雪下ろしをした時に気づかず埋もれさせてしまったのかもしれない、申し訳ない、と涙ながらに語った。私達もみんなよく知るおじさんで、お正月には挨拶したこともあるし一緒におせち料理を食べたこともあるくらいの間柄である。到底、彼を責める気にはならなかっただろう――息子を失った伯母さんは、ショックで気絶して入院してしまったのでどうなのかは知らないが。
そう、だから。問題はそこではないのだ。
『雪が降るという情報はありましたが、まさかこんなに早く振りはじめるとは思ってもいませんでしたね……』
『はい、気象庁の発表では、夜から振りはじめる可能性が高いとのことでしたからね』
ホテルのニュースでは、キャスターたちがそんな会話をしている。私も思い出していた。確か、大晦日の日は本来夜から雪が降ると言っていたということを。つまり、天気予報は外れていたわけである。
気づいたのは、直前で雪が降り出す気配を察知した専門家くらいなものだっただろう。そう、うちの母のような。
「お葬式の黒い服、家から取ってこないといけないわね。ひいおばあちゃんが亡くなった時以来だし、星奈ちゃんに着られるといいんだけど」
「うん……」
「あんまりしょんぼりした顔しちゃだめよ。あくまで気の毒な事故であって、誰も悪くなかったんだから」
「…………」
お母さんが、どこかうきうきしているように見えるのは気のせいだろうか。いくら大嫌いな伯母さんの子供とはいえ、まだ小学生の男の子が亡くなったというのに。
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