過疎地域持続的発展支援特別措置法

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 集落は過疎地域持続的発展支援特別措置法(過疎法)に基づき過疎地域に指定されているため,毎年御国から村の口座に一定金額が振り込まれた。  しかし正しい金額もその制度も理解している者は集落には皆無なため,年々独り身の村長の自宅が豪華になるばかりだった。村のために税金が使われることは一切なかったが,医師である村長の家が豪華になってもそれを気に留める者もいなかった。  山に囲まれた道は冬の寒さでアスファルトがひび割れ,降り積もる枯葉と雪でガードレールは錆び,すっかり埋め尽くされた。しかし自給自足に近い生活が当たり前の年寄りたちにとって,道が荒れようと枯葉が積もろうと生活に大きな変化はなく,生まれ育った里でしかなく,苦労は当たり前だった。  若者のいない集落では雪搔きをする者も限られ,冬から春にかけてはどこの家も閉ざされた粗末な造りの屋内で最低限の生活を送った。  そんな集落ですらNHKだけはきちんと観ることができるので,年寄りたちの冬の唯一の娯楽は家に篭ってテレビを観ることだった。    
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