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安すぎて58円が秘密の暗号のようにすら思えた。
「わかりました。トーストお願いします」
「トーストを作りますので、空いている席にかけてお待ちください!」
「お客さんが他にいないから、全ての席が空いてるけどね」
「しばらくお待ちください!」
椅子に腰掛けていると、数分で店員がトーストを持ってきた。
「ごゆっくりお召し上がりください!」
何の変哲もないただのトーストに、バターがついていた。
こんなに安いので味が悪くても仕方ないと思って、バターを塗ってトーストを口に入れた。
突如、体が稲妻を受けたような衝撃に包まれた。
芳醇な香りが鼻を抜けて全身に広がり、パンの甘みとバターのコクが舌の上で饗宴をしていた。
「うまい! うますぎる!」
トーストを食べる手が止まらなくなった。
バターをトースト全体に塗りたくって、矢継ぎ早に食べた。
気づいた時には全部食べ終わっていた。
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