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僕は大満足で口元に笑みを浮かべながらレジに向かった。
「とてもおいしかったです!」
「それは良かったです! お会計は58円になります」
僕は右のポケットから財布を出そうとした。
ポケットの中に手を入れるけど財布がなかった。
おかしいなと思いながら、左のポケットの方も探している時に思い出した。
家の中に財布を置き忘れていたことを。
「ごめんなさい」
「はい! 何でしょうか?」
「家に財布を忘れてきたので、今から取りに帰ることはできますでしょうか?」
店員が屈託のない笑顔で応えた。
「できません!」
「やっぱり」
「お金が足りない場合は、足りない金額に関係なく、マグロ漁船でしばらく働いてもらうことになります!」
店の裏手に港に行くための車が停めてあって、現実感のないままそれに乗った。
数時間後、港に着くとがっしりとした体格の屈強な男達が大勢いる船に乗り込んだ。
こうして僕のマグロ漁船の旅が始まった。
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