お客様は…

1/1
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
いつもの定食屋 まあ常連客がポツポツと。 このへんでは、この店しかないので時折ご新規さんも来るのだが。 店先の今日の定食のサンプルを確かめカウンター席に座った。 「いらっしゃい」 店主の声 「スタミナミックスフライ定食」 「いつも同じようなものばっかり、たまに野菜も」 「うちの母親みたいなこと言う」 お女将さんがそう言うと水を目の前にコトっとおいた。 就職してこの街に勉めて数年。もう常連のうちなんだろうか。 最初は先輩と来ることがあったけどじきに皆と時間を少しづつずらして行くようになった。 「ん」 テーブル席に見かけないお客さん。ご新規か。一人だ。 チャラチャラした派手なカッコをしている。 「まだ、できないのか」 いらついている 「すいません、もう少しなんで」 「見てみろ、二人だけだろ店の中は」 「いやぁ…」 「お客様は神様っていんだろ」 ドカッ、ガシッとテーブルを蹴飛ばした。 「申し訳ございません。他のいろんな神様いやお客様に迷惑がかかりますので」 「なにおっ」 彼がイキった直後に店主は仕方ないなという顔をしながら 「店内の皆さんお騒がせしてすみません」 「どこにいるんだおらぁ」 「順番にお作りしてますので」 するといないはずの店内に 異形の"お客様"がボヤンボヤンと浮かび上がった。 その一人が舌なめずりしながら、 「大将なんならこいつも料理してもいいぜ」 店主はニヤリと笑って 「いやあまり美味そうでないからやめとこう」 彼は青ざめた顔で店を飛び出していった。 「お客さんすまないねぇ、材料逃げてないわ」 「スタミナミックスフライ定食のいい材料はいったら今度にするよ」 私はしかたなく別のメニューを選ぶことにした。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!