2. 出会い

6/33
前へ
/38ページ
次へ
 麗華さんはお求めの書籍を二冊購入されました。対する僕はもちろん買う物などないので、目的を忘れたふりのまま麗華さんと書店を出ました。  麗華さんが買われたのは、二冊の小説でした。僕は活字に弱いので、偉人である小説家のお名前も二人ほどしか挙げられないのですが、やはり麗華さんが大事そうに抱える二冊の小説の作家さんも僕は知りませんでした。ただ分かったのは、一冊は和書、もう一冊は洋書ということだけです。麗華さんも恐らく言語系の学部でも学科でもないので、やはり麗華様...麗華さんはとても秀才な御方のようです。  「じゃあ、ここで。」  話し下手な僕のために沢山話してくれた麗華さん。そんな夢の時間もすぐに終わり、別方向に家がある麗華さんは交差点で僕に手を振りました。僕は麗華さんにお辞儀をして、僕も自分の家に足を進めました。  本当は「用事が」などと理由をつけて同じ方向に行くことも出来たのですが、僕はそうはしませんでした。もしそうすれば、いよいよ僕が麗華さんをつけていることがバレてしまうかも知れないからです。  その代わりに僕は、今日あった夢の映像を何度も何度も頭の中で再生しては巻き戻しました。そうすることで、体が浮くようなとても幸せな気持ちになれたのです。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加