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その時間の講義はというと、僕は全く集中出来ませんでした。心臓が激しく働くので、熱を帯びた赤い全身を見られないように、僕はひたすらに頭を下げていました。
ああきっと漫画だったら今、僕の頭のてっぺんから湯気が出てるんだろうな。シューって音をたてて、それが僕のクルクルの髪を揺らすんだろうな。
よかった、現実で。
その時間僕の頭頂部上の空気が湿って温度が高かったことは、僕自身気づくはずもありませんでした。
結局講義の内容が全く頭に入らないまま、その時間を終えました。
つまり、麗華さんと二人きりの時間が始まったのです。
それを思うと震えの止まらない僕ですが、幸い麗華さんはそれに気がつきませんでした。ただ、動揺が隠せずもたもたしている僕に気を遣って、僕が片付け終わるのを気長に待ってくれていました。
何とか片付け終えた僕に麗華さんは笑顔で「行こ」と言いました。
ああ。何かこのシーン、何かの漫画で見た事ある気がする。
やっぱりここは夢の中なんじゃないか?
もしかしたら寝坊に寝坊を重ねて大変なことになってるんじゃないか?
そう不安に思った僕は麗華さんについて行きながら、自分の皮膚を思い切り摘まんでみました。
「痛」
思わずそう声を漏らした僕を、麗華さんが振り返って、何?と聞きました。
「何でもないです。気にしないで下さい。」
慌ててそう言うと、麗華さんはそっかと言って再び前を向きました。
これは夢じゃない。
そう分かった時、僕の顔が熱くなりました。
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