2. 出会い

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 ですが、読み始めてすぐ、僕の予想は単なる偏見だということに気がつきました。  活字慣れのしていない僕の読むスピードはきっと凡人以下なのですが、そんな僕でもすぐにそれが分かった程、物語の序盤は僕の予想と全く違いました。  『ありのままの私』。  それは、大人しい話でも、柔らかい話でもありませんでした。  言うならば、サイコ・キラーの話だったのです。  あまりに想像とのギャップが凄かったので、僕は生まれて初めて、文字だけの世界にのめり込んでしまいました。漫画ですらしたことがなかったのですが、僕はそれを一気に読んでしまいました。気づけば時計の針は夜の十二時を回っていました。  「麗華さん、こういうの読むんだ...」  それを読み終え第一に思ったのは、そんなことでした。  中身はというと、かなりグロテスクな表現も含まれていて、漫画でよくある血がブシューーっていうのとかが上手い具合に文字化されていました。  それを読み終えた今、僕が想像していた麗華さんの像が形を変えてしまいました。麗華さんがこういう本を読むだけで、麗華さん自身がどうってわけじゃないはずなんですが、どうしても僕はその像を以前のように固めておくことが出来ませんでした。  あ、勘違いしないで下さい。僕の頭の中にあるそれが変っただけで、僕の麗華さんに対する気持ちに変わりはないです。こういった本を読むという麗華さんが本当の麗華さんであり、従って思い込みが崩れた僕はそのことにとても喜びを感じました。  また一つ、麗華さんを知ることが出来た。  そんな喜びが僕を満たしていたのです。  
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