2. 出会い

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 その小説を読み終えて、僕は翌日、正確には今日の講義の予定を思い出しました。最初の講義は一限目。つまり、朝の九時からなのです。  焦った僕は急いでシャワーを浴び、携帯のアラームを三分刻みに二時間設定しました。  あ、そう言えば今日の夕食代は浮いたな。  夕飯も食べずに布団に潜った僕はそんなことを思って眠りにつきました。  朝は何とか起きることが出来、遅刻もせずに出席することが出来ました。ただ、いつも一杯睡眠を取る僕にとってその日は完全なる睡眠不足となり、講義中は起きることだけに集中したため、全く内容が入ってきませんでした。  これで二度目だと後悔してももう遅く、いつのまにか終わった講義の教室を後にし、僕は二限目の講義の教室に向かいました。  二限目は何と、麗華さんと同じ講義だったのです。麗華さんと同じ講義は既に把握済みだったのですが、何せ寝不足でぼうっとする頭です。そんなことはすっかり忘れていて、その時間麗華さんが隣に来たことで僕は思い出しました。  「あれ、寝不足?目がうつろだよ。もしかして昨日買ったの読んでたの?」  睡眠不足がバレバレの僕は隠す理由もないので、麗華さんの質問に頷きました。  「お!流石は太郎君。小説好きだね~。どうだった?」  買ってすぐ読み終えたのはたまたまで、いつもこんなことをしているわけではないなど、ダラダラと言い訳をするのも見栄えが悪いと、僕は本の感想を言いました。  「とても、興味深かったです。麗華さんが、表現が好きって仰っていたの、何か分かる気がします。」  それらしい言葉を探して答えると、麗華さんはとても嬉しそうに笑いました。  「分かってくれるー?いいよねー、本当に。」  麗華さんは本当にあの手の話が好きなようでした。昨日とは違って見える麗華さんの横顔ですが、やはりとても美しかったです。
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