2. 出会い

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 「散らかってるけどごめんね~。」  僕の前を身軽に駆けて部屋に入る麗華さんに続き、おじゃましますを言って僕は初めて人の家に上がり込みました。何せ、僕がずっと見てきた人のお宅です。玄関先に並んだ可愛らしい靴を目にした時から愛おしさを感じていました。一見よくあるアパートの一室です。玄関から伸びる五メートル程の廊下の左側には浴室とお手洗い、右側には台所があります。そして一番奥にはリビングに続く扉があります。そんな至って普通の光景なのに、僕の目には明るさをプラスするフィルターがかかり、その画面にはピンク色の柔らかいフレームがかかっています。何これ幸せって、玄関の先から僕は夢の世界に入ったようでした。  そんな僕の妄想なんか知らない麗華さんは真っ直ぐにリビングに飛び込んでいきました。僕もその後を追いました。この時間あ何の後ろめたさもなくその後を追えることに、僕は喜びも感じていました。  何かもうずっと気持ち悪いですね、僕。僕の頭の中はそんな感じなのですが、実際の所は家に案内された僕が麗華さんに促されるままその家にお邪魔し、そして麗華さんに呼ばれるまま麗華さんの後にリビングに入っただけなのです。幸せすぎて高ぶる気持ちと緊張で顔がおかしくなりそうなのを必死でこらえていました。だってそんな顔をしたら、麗華さんに気持ち悪がられてしまうから。僕は平然を装うことに必死でした。
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