2. 出会い

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 ずっと、気になってた?  いやいやいや。待て早まるな、僕。  麗華さんはただ、とてもいい人で、とても目がいい方だから、僕みたいな奴を見つけて下さった。地味でずっと一人でいる僕に気を遣って話しかけて下さろうとしていた。  そういう意味の「ずっと気になってた」、だ。  なのに僕という愚民は、何故に少しでもやましい期待を抱いてしまったのか。  処刑だ...獄門打ち首だ...  「ぼ、僕ももっと早く、麗華さんとお話出来ていればと思いました。」  何と返していいのか分からない僕は、そんな戒めを内側でしながらそう答えました。すると麗華さんは、とても明るい笑顔を見せて下さいました。  「気が合うね、太郎君。」  ああもう、罰を受けないといけない身でありながら、そんな天使の微笑みを見られるなんて...  しかもこんな二人きりの空間で見せて頂けるなんて、いよいよ僕は溶けてしまいそうです。  いっそのこと溶けきって、床に敷かれている敷物に染みこんで、そのまま粗大ゴミとして回収されたい...  それが僕の刑になるだろうから...  でもよく考えれば麗華さんの家の敷物に溶け込むなんて、ある意味刑でも何でもないのではと思った僕はその案をすぐさま排除しました。
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