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「そう言えば太郎君、あの本の感想もっと聞かせて?」
僕の正面に座っている麗華さんが机に両腕で頬杖をつき、僕にそう聞きました。僕自身感想を言うのが大の苦手で、いつも自分の語彙力のなさに落胆します。多分、小学生の感想文の方がよっぽど様になると思います。
なのでそう聞かれた僕は少し汗をかきながら、
「えっと....とても面白かったです。」
と、とりあえず返しました。
「どの辺が?」
僕の幼い感想を馬鹿にもせず、麗華さんは予想される質問を僕にしました。
「あの...主人公が、初めはとても暗い人生を歩んでいたのが、最後には明るくなったという部分が、その、素敵だと思いました。」
まるで序文と跋文の一文だけの感想を僕が言うと、そんな内容のないものにも麗華さんは優しく頷いてくれました。
「そうだよね。ハッピーエンドと言えばハッピーエンド。」
『と言えば』と麗華さんが言ったのは恐らく、その過程で多くの人が亡くなったからだと思います。サイコ・キラーである主人公は己のサイコパスな一面を隠すことに苦しみを感じていましたが、それをさらけ出せる世界を見つけ、タイトル通り『ありのままの私』になって物語は終結します。なので、主人公にとってはその物語は『ハッピーエンド』なのです。
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