2. 出会い

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 「太郎君はさ、ああいう人のこと、どう思う?」  『ああいう人』がどんな人なのか、一瞬解せなかった僕ですが、話の流れからすれば『ありのままの私』のことなので、自ずとサイコ・キラーやサイコパスの話だと考えました。そこはとても慎重な答えが必要だと思ったので、少し考えて僕は答えました。  「人がどんな性格なのかは、ある種仕方がなくどうしようもないことだと思います。ですがやはり、命を殺めるという行為は他人の人生を巻き込む大事なので、『殺し』という点では同意でいないかと。」  主人公は自身が人と違うことにとても苦悩していました。彼女のサイコパスな一面は、何が原因かというよりも自然と身についた、いわば性格のような一面であると描写されていました。仮にその原因があったとして、突き止めたところで彼女が救われる訳でもありません。なのでサイコパスとなってしまったことはある意味仕方のないことなのです。  でもそこから殺人を犯してしまったことは、彼女の大きな過ちだと僕は思います。失った命は戻ってきません。彼女が罪を犯すに当たって様々な引き金があったのですが、それらに立ち会う前にどうにか共感能力を高める手立てをしていれば、彼女はキラーにならずに済んだかも知れません。  僕がいっちょ前な感想を言うと、彼女は頷きました。  「確かにね。殺しはいけないことだよね。もう戻ってこないもんね、一度失った命は。」  麗華さんに同意するように、僕は二度頭を縦に振りました。
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