2. 出会い

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 僕がそう答えた時でした。  麗華さんが突然、僕に迫ってきたかと思うと、その冷えた掌を僕の首元に当てたのです。  「殺さなくても、だめ?」  あと数ミリ前に出れば鼻の先が当たってしまいそうな距離にいる麗華さんは笑いもせず、ただ真面目な顔で僕にそう聞きました。正直僕は言葉が出ませんでした。代わりにさっき感じた寒気が強くなり、それが僕の体を震わせていました。  「太郎君、凄く震えてる。どうして?」  麗華さんは聞きました。  どうして...?どうしてって、それは...  「お、驚いているんだと、思います...」  「驚いてる?驚いているから震えてるの?」  確かに違和感のある答えだったと思います。驚いているのも確かにあるが、そこから別の感情に体が反応しているのかもしれない。  「...いえ、恐らく怖いのだと思います。」  そう考えた僕は、改めて麗華さんの質問に答えました。  すると麗華さんは「そっか」と静かに言い、僕を離しました。首元にはまだ麗華さんの手の感触が残っています。
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