2. 出会い

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 それに気がついたのか、麗華さんはあっと声を出したと思うと手にしていた包丁をテーブルの上に置き、両手を上に上げました。  「襲わないから、本当に。」  言いながら麗華さんの立ち位置はやはり僕をすぐに襲える範囲だったので、僕は凶器を手放した麗華さんにも全く気を休めることが出来ませんでした。  でもこうしてここで震えているだけではどうしようもない。  そう思った僕は力が抜けた体を何とか動かし、麗華さんの行動を逐一確認できる目線でその前を通り過ぎました。テーブルに置かれた包丁はギラっと僕を睨み付けています。その包丁だけが今にも飛びかかってきそうな程でした。  その状態で何とか麗華さんと包丁の目前から離れ、僕はリビングと廊下の境目まで来ました。あまりぐだぐだしていると、逃げる時間が短くなってしまう。次にそう考えた僕は、ようやく力の入った体を立たせ、一目散に麗華さんの部屋をバタバタと出て行くことに成功しました。
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