それは如月、逢魔時

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 私もわかってる。和馬さんたちは、私たちを二人きりにしようとしてくれてるんでしょ? でも、今まで二人きりで呑むのはもちろん、遊びに出かけたりもしてる。だけど、この微妙な関係はちっとも変わらないんだから、ここでぽんと二人きりにされたところで何事も起きないことは確定してるの。だったら、賑やかな方が楽しい。 「お気遣いありがとうございます。でもほら、一緒にケーキ食べましょうよ」 「納得いかねぇ……」  苦虫を噛み潰したような顔で唸る和馬さんにちょっと笑って見せてると、背中をぽんと叩かれた。 「おつかれさま、結ちゃん」  艶やかでちょっとハスキーな声。振り向くと、かおるさんがにっこりと笑いかけてくれていた。和馬さんの元の奥さんで、今もケルベロスのライブでは最前列を守る古参ファンだ。 「おはようございます」  その後ろには、年若い煌めくようなイケメンを連れている。 「おはようございます」  彼がそう挨拶して微笑むと、下まつ毛が長いたれ目が緩やかに弧を描く。麗しい。かおるさんの彼氏で、和馬さんの弟子のドラマーの男の子だ。
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