それは如月、逢魔時

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 いわゆるモエ黒。モエ・エ・シャンドンのネクターは、通常のモエよりワンランク上だ。通常のモエは好きじゃないけど、黒なら美味しい。とは言え! 「あら、白がよかった?」 「じゃなくて」 「ヴーヴっすかね」  このカップル、ノリノリじゃん……。 「その、モエ黒は好きですが」 「10分くらいで来るぞ」  いつの間にか電話をかけ終わった和馬さんが、そう報告してくれる。既に行動は終わっている……。 「ありがと。で、たーけは……」  かおるさんはステージをちらりと見る。 「ドクター・ドクターだねぇ」  しおんくんが半笑いで今やってる曲を口にする。MSG2曲目に突入。 「どんだけたーけだ。殴るぞ」 「殴ることないじゃないですか」 「デート中に連チャンでギター弾くバカがどこに」  そこに。 「そもそもデートじゃないです」  水割りを一息に空けたかおるさんは、グラスをマオくんに差し出しながら私をじっと見る。 「デートよ。結ちゃん、妥協しちゃダメ」  うう。お姉様の一言には重みがある。 「そうっすね。バースデーってことで呑みにきたんなら、普通デートですよ」 「でしょぉ? 雄貴さん、自覚がないんだよねぇ」
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