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映像は途切れ、白い壁に戻る。白い少年は首を僅かに倒し、諭すように言う。
「ほらね。君は確かに愛されているんだよ」
「知ってるさ。ちゃんと幸せだった。……でも、君だって知っているだろう?」
白い少年は一瞬目を見開いた後、すぐに視線を落とし口をつぐんだ。それを見た黒い少年は遠い目をして言葉を続ける。
「父さんと母さんの、本当に大切な人は、『僕』じゃない。顔も名前も知らない、余所の人なんだよ」
「それでも! ちゃんと幸せだった。それだけで、いいじゃないか……」
白い少年は勢いよく顔を上げたが、徐々に言葉は力を失う。黒い少年はゆっくりと目を閉じる。長い睫毛の下から大粒の涙が流れ落ちた。
「それでもいいと思ったさ。でも、耐えられなかったんだ」
白い少年は再び押し黙る。
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