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リゾートホテル
…今はもう、老いぼれになってしまったけれ
ど、昔と変わらずこれだけは言おう。「葉子さ
ん結婚、おめでとう。お幸せに。」続けて言っ
た。「貴女はこの公園が大層気に入っているよ
うだね。どんなリゾート地よりもここがいちば
ん落ち着く。いささかそんな風にお思いか
な?」葉子はドキリとした。が、すぐにいつも
の優しい笑みを浮かべて『そうなんです、だか
ら私にとってのリゾートホテルは、病室なんで
す。患者と病室にいること、公園でまったりと
話すことが私、一番好きなんです。』
リゾート地が公園、リゾートホテルが病室。か…。いかにも葉子らしい。昔から変わらないな。
葉子、ありがとう…。進はそんな風に心の中でつぶやいた。
葉子は、更に続けた。『尾崎さん、すぐにカッ
としやすくって、私の親しい人や入院してる患
者さんの事、悪く言うんです。最近だってそ
う…あの時より前だって、ずっと貴方の事悪く
言ってたのよ。だから、いずれは上がり込んでくるだろうなと思ってたのよ』
「あの時?あの時って、喧嘩したときかい?」
「えっ?だって君は、過去の若い頃の君の筈だけど…?」
進はつい、口を滑らせてしまった。
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