懐かしい恋心

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懐かしい恋心

 「おはようございます。えっと…新しく入った看護師さんでいらっしゃいますか?」  彼女は変わらず柔らかな声で、『はい。本日 からこの病院に勤務します。担当の猪俣葉子と 言います。よろしくお願いします!』 やっぱりそうだった、葉子じゃないか!僕の妻 の葉子じゃないか!会いたかったよ、葉子!あ っでもいきなりは不自然だしなぁ…。彼女の若 かった頃の仕事は看護師じゃなかったはずだが…。 何だったかな?う〜ん…。思い出せない…。  血圧計を手際良く扱いながらも目線を合わせ てはくれない。きっと恥ずかしいのだろう。 「本日からここに」と言っていたし、無理もないか。    殆ど会話はなかったが時折、僕の顔を覗き込 む時の角度は、生前の彼女と全く一緒だった。 目が合ったと思うとドギマギしながら慌てて逸 らす。夫婦になってからは慌てる所なんて見て ないから、ギュッと胸が締め付けられた。どこ か懐かしさもあった。それが、たまらなく嬉しかった。
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