未熟だったあの頃

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未熟だったあの頃

 もっとも、向こうは僕のことなんてこれっぽ っちも気に留めていないはずだが、僕が君に出 会ったのは君が25の時だ。ということはもうそ ろそろか…出会った当時、僕は29だったな。  …まだまだ私も若かった…。医療機器の営業を していた僕は出世したいばかりに仕事漬けの 毎日…。ふふ。今にして思えば、身体を酷使し ていたよな。そんな時、取引先の会社の君に出 会った。事務職だったかな?当時、本当に仕事 しかしていなかった僕。『営業トーク』はお手 のものだったけれど、歳下の君を楽しませる会 話術なんてものは持ち合わせていなかった。  それでも君は僕の話に笑ってくれた。そう だ!君は医療事務をやっていたんだったね。そ ういうことも含めて、話が合ったんだった。 君は元々看護師さんを目指していたんだけれ ど、夢破れて…。いつも柔らかな雰囲気の君が 僕の前で悔し泣きしちゃってね。慌ててハンカ チで涙を拭いてあげたんだったね。 その時、惚れちゃってね僕。こんなに素直に、 思い出していること、それも悔しかったことを 話していたこと。そして、泣いていること自体 が、美しいと感じたんだ。
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