人の記憶

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人の記憶

 「あきらめの悪い奴だったよな…。」ベッ ドから起き上がると、麻生進は俯き気味にそう つぶやいた。この歳になると昔の事ばかり思い 出す。その一つひとつの想い出が、まるで昨日 の出来事だったのではと感じられる。不思議な ものだ。僕には「鮮やかな」とまでは言い切 れないが、当時感じていたことを、再度感じる ことができるのだ。ただそれが、「正確かどう か?」と言われれば、正直困ってしまうのだが。   だけれども、「想い出補正」とでも言うの だろうか?想い出すのはほとんどが良い事ばか りなのだから、人の記憶というものは案外あい まいで、都合良くできているのかななんて思う。
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